【概要】
本論考は日本における自殺と労働との関係について精緻な分析を行うための予備的考察として、自殺に関する社会学の諸理論について、特に労働分野との関連から整理し、日本における自殺に関する若干のデータを用いて、研究課題を整理した。
既存理論の整理については、デュルケイム『自殺論』の検討を出発点として、その後の理論を、ポスト・デュルケイムの自殺理論(相対的剥奪論、孤立・孤独と社会的排除、組織に起因する自殺)と、ポスト工業化時代の労働と自殺(若年、意識と自殺との関係)にまとめた。また、日本における労働と自殺との関係について、既存研究を整理し、日本の傾向性や特殊性を示すいくつかの実証データから、日本をフィールドとして労働と自殺との関係を研究することの意義を述べた。
【章構成】
1. はじめに
2. デュルケイム『自殺論』と近代社会
2.1 統合と規制
2.2 4パターンの自殺
2.3 デュルケイム理論による近代化と同業組合
3. ポスト・デュルケイムの自殺理論 労働とのかかわりから
3.1 相対的剥奪論
3.2 孤立・孤独と社会的排除
3.3 組織に関する自殺
3.4 ポスト工業化時代の労働と自殺
4. 日本における労働と自殺 どのようにアプローチすべきか
4.1 日本における労働と自殺に関する研究
4.2 日本における労働と自殺の関係性をめぐる論点(1) 雇用と自殺
4.3 日本における労働と自殺の関係性をめぐる論点(2) 組織と自殺~まとめ